LEGASEE [THE EDIT] 漆芸特集 Vol.1

LEGASEE [THE EDIT] 漆芸特集 Vol.1

THE EDITは、LEGASEEの視点で作品を選び、編んでいく特集です。

素材、技法、造形、背景、そして来歴の可能性まで。

ひとつのテーマから、いま注目したい現代工芸を紹介していきます。

 

 

作家:三木 表悦 作品:切錆大板「漣」

¥2,500,000

代々「表悦」の名を受け継ぐ漆芸の家に生まれ、四代表悦が手がけた大板作品。

光を受けることで、その表情を大きく変える本作は、穏やかな光には静かに、強い光にはいきいきと応え、夜の海に揺れる波のような気配を湛えています。

「漣」と題されたこの作品に込められているのは、水面の美しさだけではありません。

海が常に穏やかではないからこそ、心の中にある静かな海を思い、他者と共感し、工芸が平和への架け橋のひとつになればという願いが重ねられています。

用いられているのは、漆と石粉を混ぜた“錆”を幾度も塗り重ね、削り出すことで稜線を立ち上げていく「切錆」の技法。

明快な輪郭と、そこに生まれる光の反射が、波の静かな起伏を印象深く浮かび上がらせます。

長く受け継がれてきた漆芸の系譜の上に、光と心の風景を静かに映し出した一作です。

 

 

 

作家:定池 朋子 作品:乾漆こはくバングル

¥44,000

三代続く漆工房に生まれ、代々仏壇蒔絵師として受け継がれてきた技と感性を背景に制作されたバングル。

漆と布を重ねて成形する乾漆技法による、軽やかで丈夫な一作です。

古くは仏像や調度品にも用いられてきた乾漆ならではの軽さと強度に、現代の装身具としてのしなやかさを重ねています。

表面には金箔を幾重にも貼り重ね、奥行きのある上品な色合いに仕上げました。

光の角度によってわずかに表情を変える質感には、素材と工程の積み重ねが静かに表れています。

金具を使わないため、金属アレルギーの方にも使いやすく、素肌にも服の上にも美しくなじむバングルです。

 

 

 

作家:河野 詩織 作品:蠢動

¥250,000

漆工芸の加飾技法を用いて、有機的で抽象的なかたちを平面の中に立ち上げた作品。

不安定さを内包した形態を、卵殻や螺鈿などの微細な素材の集積によって形づくり、漆によって静かに定着させています。

塗り重ねと研磨を繰り返すことで、繊細な要素は次第にひとつの強さを帯び、艶やかな輝きとともに全体が調和していく。

河野詩織は、その変化の過程に宿る漆の神秘的な力を通して、不安定な形が存在としての強さを獲得していく姿を表現しています。

うずらの卵殻による白の表現など、漆ならではの加飾技法が織り重なり、異なる素材がひとつの表情として溶け合う一作です。

 

 

 

作家:五十嵐 誠 作品:欅拭漆七角ぐい吞

¥31,900

七角形という、どこか不思議な佇まいをもつぐい吞。

偶数角の器が多いなかで、あえて七角にすることで、端正さの中にわずかな違和感と心地よい個性を生み出しています。

五十嵐誠が長く手がけてきた定番シリーズのひとつであり、その都度異なる木材を用いて制作されるこの形。本作では欅を用い、木の魅力を活かしながら、拭漆による古典的な仕上げでまとめています。

木製の酒器、とりわけ多角形の器は、木の膨張や収縮の影響から敬遠されがちな側面もあります。

その中で本作は、漆によって丁寧に表面をコーティングすることで、実用に耐える器として成立させています。

木工の造形美と、漆による機能性が静かに結びついた一作です。

 

 

 

作家:二瓶 由布子 作品:ボタニカル文様フリーカップ・ベージュ

¥15,400

足元にそっと咲く草花の気配を映した、やわらかな表情のフリーカップ。

北欧のテキスタイルデザインから着想を得た文様を、漆でひとつひとつ手描きしています。

色はすべて自身で調合し、何度も塗りと乾燥を重ねることで、落ち着きのある奥行き豊かな色合いに仕上げました。

ところどころに蒔かれた錫粉が、光の加減で控えめにきらめき、静かな華やかさを添えています。

丸みのある形は手になじみやすく、軽やかで日常の中でも自然と使いたくなる佇まい。

約四百年にわたり漆器づくりが受け継がれてきた会津の技法を背景に、暮らしに寄り添う新しい漆の表情をひらいた一作です。

 

 

 

作家:内海 紗英子 作品:友愛

¥198,000

本物の卵殻に漆塗りと加飾を施した、小さくも強い存在感を宿す作品。

生まれてくるめぐみを、さまざまな愛で包むイメージから生まれた連作のうちの一点です。

「友愛」では、心を落ち着けて寄り添うような青を基調に、蒔絵や螺鈿といった伝統的な漆芸技法によって繊細に加飾されています。

艶やかに磨き上げられた色漆と、貝や金属粉のきらめきが重なり合い、静かな祝福と神秘的な気配を感じさせます。

手仕事によって少しずつ光を増していく漆の表情には、他者の幸福を祈る行為にも似た静かな温度が宿ります。

小さな姿の中に、未来へのやさしい祈りを込めた一作です。