LEGASEE [THE EDIT] 白特集 Vol.1

LEGASEE [THE EDIT] 白特集 Vol.1

THE EDITは、LEGASEEの視点で作品を選び、編んでいく特集です。

素材、技法、造形、背景、そして来歴の可能性まで。

ひとつのテーマから、いま注目したい現代工芸を紹介していきます。

 

 

作家:渡邉 泰成 作品:Strata #White forest

¥165,000

異なる粘性の粘土を幾度も塗り重ね、焼成を繰り返すことで生まれた作品。

手仕事と窯の熱によって変化するテクスチャーの積層は、地層のように重なり合い、視点によって異なる表情を見せます。

白を基調としたこの作品には、静けさの中に複雑なレイヤーが宿り、平坦な色面でありながら、土ならではの質感と奥行きが立ち上がります。

抽象表現主義におけるカラーフィールド・ペインティングを土で置き換えるように、色と素材、表面と深層がひとつの画面の中で響き合っています。

渡邉泰成は、複雑な現代社会のあり方と、陶芸という素材の多層性を重ね合わせながら、“現代の地層”を表現しています。

白の静けさの奥に、豊かな時間と質感が潜む一作です。

 


 

作家:西野 瑠華 作品:集合ー椿ー’24-Ⅰ

¥58,300

存在の輪郭は、外側にあるのか、内側にあるのか。

あるいは、ごく小さなものの集合によって立ち上がるのか。

西野瑠華は、そうした曖昧な境界への関心を、ガラスという素材を通して静かにかたちにしています。

ガラスは、固体とも液体とも言い切れない中間的な性質をもつ素材です。

私たちはそれを確かなかたちとして認識しながら、その内側では分子がわずかに動き続けている。

本作には、そうした“見えているのに捉えきれないもの”へのまなざしが込められています。

キルンキャストとフュージングの技法によって、ガラスの粒が集まり、かたちを成していく過程をそのまま内包したようなこの作品。

白くやわらかな存在感の中に、物質の不確かさと静かな緊張が宿る一作です。

 

 

 

作家:岡村 悠紀 作品:水蠆

¥198,000

トンボの幼虫・ヤゴをモチーフにした置物作品。

山形県大石田町に残る、ヤゴをトンボの“仔”ではなく“母”と見なす古い伝承に着想を得て制作されています。

脱皮の瞬間に見える白い糸は、作家にとって臍の緒のような、命をつなぐ神聖なもの。

本作には、ヤゴという小さな存在の中に潜む、生と変容の神秘が静かに託されています。

古くから生きものの造形に挑んできた工芸の歴史を踏まえながら、岡村悠紀は独自の視点でその系譜に向き合っています。

先人への敬意とともに、伝承、自然観、生命の気配をひとつのかたちに結晶させた一作です。

 

 

 

作家:粟根 誠一郎 作品:七宝蓋物「青流」

¥250,000

白糸の滝を訪れた体験をもとに、水のゆらめきを七宝で表現した蓋物。

白を基調とした静かな景色の中に、銀線の細やかな波や、釉の高低差から生まれる凹凸が、水の流れと光の反射を繊細に映し出しています。

側面に施された銀線は、あらかじめ細かなウェーブをつけたうえで伸ばして用いることで、水のゆらぎを表現。

さらに、凸部は砥石で研ぎ上げて艶を抑え、凹部には焼き肌の艶を残すことで、やわらかな白の中にきらめく水の表情を生み出しています。

内側を満たす「淡水」の色もまた、作品全体に静かな彩りを添えています。

七宝は、金属にガラス質の釉薬を焼き付ける技法として発展し、明治期には華やかな工芸として大きく花開きました。

粟根誠一郎は、その歴史ある技に新たな造形の可能性を重ねながら、現代にひらかれた七宝表現を追求しています。

 

 

 

作家:石井 和洋 作品:煌彩二重円形切子紋器

¥60,500

独自の釉薬表現「煌彩」によって、光を受けるたびきらめく器肌をもつ作品。

ササン朝ペルシャ時代のガラス器に見られる二重円形切子紋を、約1400年の時を超えて、現代の磁器へと写し替えています。

繰り返される円形文様は、見る角度によってさまざまな表情を生み、静かな白の中に豊かなリズムを立ち上げます。

古代ガラスが今なお当時の美しさを伝えているように、この器もまた未来へとつながる存在となるかもしれない。そんな時間の広がりを感じさせる一作です。

 

 

 

作家:平賀 愛子 作品:抹茶茶碗「国産みⅡ~kuniumi~」

¥150,000

渦を大きな創作テーマとする平賀愛子による抹茶茶碗。

器全体にうねるような流動性をまとわせ、丁寧に磨き上げたエッジと薄く施した釉薬によって、緊張感と奥行きをあわせ持つ表情に仕上げられています。

本作の着想源となっているのは、古事記に描かれる「国産み」の物語。

イザナギとイザナミが天沼矛で混沌をかき混ぜたときに生まれた渦をモチーフに、茶碗という小さな器の中へ、生成と循環のイメージを凝縮しています。

渦は、古代の文様にも、銀河や遺伝子の構造にもあらわれるかたち。

呪術的な魅力と科学的な螺旋運動の両方を宿すこの造形を通して、平賀愛子は茶碗をひとつの“小宇宙”として立ち上げています。

どこを正面にしても物語が生まれる、動きに満ちた一碗です。