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HosaiXVI
日本🇯🇵
茶盌の制作において、偶然性と如何に向き合うかということは大きなテーマです。 この紅鹿背(べにかせ)は、朝日焼の伝統的な作風であり、そのルーツは高麗茶盌の御本手に遡りますが、偶然性との対峙という意味でとても象徴的な作品です。 窯の中の火は、酸化と還元という二つの状態を作り出します。酸化の炎で焼かれるものと、還元の炎で焼かれるものは、同じ土、釉薬でも異なった表情を作ります。本来、その共存しない二つの状態を、一つの作品に閉じ込めるように生み出した表情を、朝日焼では鹿背や紅鹿背と呼んでいます。 登り窯の松割り木での焼成を、今まで培ってきた経験によって繊細に進めていくと、窯の中の火の強い部分を還元、火の弱い部分を酸化の状態に焼き上げることが可能です。その還元した部分と、酸化した部分の狭間に、美しい作品が生まれます。 美しいグラデーションや斑点模様は複雑で、二度と同じ景色を生み出すことはできない偶然性の産物で、本当に美しいものは窯の中で10%もありません。 その偶然性に対峙し、制御不可能さを受け入れつつ、経験と技術を駆使して窯を焚く。 そして美しい茶盌を選び出す。そうしてこの茶盌は生まれます。
この茶盌は斗々屋(トトヤ)という高麗茶盌を朝日焼としてオマージュした作品です。 茶の湯の歴史において高麗茶盌は重要な地位を占め、井戸(イド)や伊羅保(イラボ)など特に数種類の古来より茶人に愛されてきた茶盌があります。その中の一つが斗々屋(トトヤ)と呼ばれる種類の茶盌で、様々な特徴を備えますが、高台脇のちりめんジワと呼ばれる独特のテクスチャを備えた削り方が最大の魅力です。茶盌の魅力は高台に凝縮されると云われますが、特に斗々屋茶盌のちりめんジワの魅力は土がソバ立ち、織物の縮緬(チリメン)のように細かくあらわれるシワにあります。代表的なものには三井記念美術館収蔵の「かすみ」という銘の茶盌があります。 そのような魅力的な、ちりめんジワに惹かれたのは十六世だけではなく、朝日焼では十四世豊斎、十五世豊斎もそれぞれの研鑽と工夫により、朝日焼らしいちりめんジワを追求してきました。十六世はそのそれらよりも少し荒々しい本来の斗々屋が持つちりめんジワの魅力により近づくような雰囲気を目指し、土の調合や、削り方に工夫を重ねて、この茶盌のような表情にたどり着きました。
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