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カートは空です
Kouki-Matsushima
日本🇯🇵
紐は古来より、「結ぶ」「締める」「繋ぐ」という機能を担いながら、人と人、物と物、祈りと身体を静かに結び続けてきた存在である。本作《緒(いとぐち)》は、染色を施さず、絹本来の生成色のみで構成した作品である。色を加えないことで、素材そのものが持つ光沢、撚りの陰影、束ねられた線の集積がより強調される。「緒」とは、物事のはじまり、きっかけ、連なりの起点を意味する言葉である。一本の糸が撚られ、組まれ、重なり、やがて大きなかたちとなる。その過程は、時間の蓄積であり、関係の構築でもある。結び目のように見える構造は、固定であると同時に、解かれ得る可能性を内包する。それは、紐が本来持つ可変性と、緊張と緩和のあいだにある造形の美を提示している。本作には器のような決まった形態は存在しない。床に置くことも、空間に吊るすことも可能であり、展示環境によってその姿は変化する。紐という素材が本来的に持つ柔軟性と可変性をそのまま提示するため、かたちは固定されず、空間との関係性の中で立ち上がる。素材の原初性と構造の量感によって、紐という存在の根源へと立ち返る試みである。
くみひもは古代より伝わる組紐技法で、仏具や装束、武具などに用いられながら発展してきた。奈良時代の遺品にもその例が見られ、時代とともに用途を広げ、江戸時代には帯締めとして大きく展開した。伊賀くみひもは、三重県伊賀市を中心に継承されてきた地域的系譜を持ち、精緻で立体的な組構造を特徴とする。実用性と装飾性を兼ね備えた技術として磨かれ、現在まで受け継がれている。本制作は、この伊賀くみひもの技術を基盤としながら、用途に限定されない造形へと展開するものである。伝統的構造を継承しつつ、現代の空間や感覚に応答するかたちで、くみひもの可能性を拡張している。
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