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カートは空です

kenyu
日本🇯🇵
『黒朱茶椀「幽狐」』は、人の心に潜む“多面性”を主題とする。 古来、九尾狐は妖しき存在として恐れられながらも、叡智と変化の象徴でもあった。黒漆の深淵は、内なる闇と可能性の同居を示す。そこに刻まれた尾の軌跡は、善悪を超えて生を貫く“意志”の痕跡である。 三橋鎌幽は、禅の「空」に通じる無常の中で、人が何者にもなり得る自由を見つめます。光を拒む闇ではなく、光を内包する闇。その中でこそ、存在の輪郭が立ち上がる。茶を点てる行為が心の影を映す鏡となり、使い手自身の「内なる狐」と対話する器である。
九尾狐の物語は、中国・唐代の『山海経』に始まり、平安の『玉藻前伝説』として日本に渡った。 恐れと畏敬を同時に呼ぶこの象徴は、やがて神仏習合の時代に「守護」と「警鐘」の両義を帯びた。 鎌倉期、禅僧が説いた「光もまた闇のうちに生まれる」という思想と響き合い、本作の黒漆はその精神を受け継ぐ。 器形は楽茶碗を範に、九尾の文様は鎌倉彫の刃筋で立ち上げた。 漆の深黒に沈む九尾狐をプラチナ箔で表し、神話と信仰の境界を超えて、現代の「祈りのかたち」を再生する。またその眼差しを狐が持つように表現。平安の物語から室町の禅、そして現代の精神へ──千年の闇が静かに光を孕む、その連続の上にこの茶椀は在る。
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