LEGASEE [THE EDIT] 幻獣特集 Vol.1

LEGASEE [THE EDIT] 幻獣特集 Vol.1

THE EDITは、LEGASEEの視点で作品を選び、編んでいく特集です。

素材、技法、造形、背景、そして来歴の可能性まで。

ひとつのテーマから、いま注目したい現代工芸を紹介していきます。

 

 

作家:有澤 悠河 作品:Dragon -IBUKI-

¥1,000,000

「紙の命の息吹くさま」をテーマに制作された、龍の折り紙作品。

紙づくり、染色、折りの設計、折り上げまで、すべてを作家自身が手がけ、完成までに5か月を要した一作です。

複雑で均衡のとれた構造は、長い試行錯誤と数学的な設計を経て生み出されたもの。

1枚の正方形の紙から、切り込みを入れずに折ることで形づくられており、折り紙表現の限界に挑んだ作品でもあります。

使用される手漉き和紙もまた、紙漉き職人である作者自身によるもの。

厚さや質感を紙づくりの段階から緻密にコントロールし、楮と雁皮を配合した特別仕様の和紙によって、龍の力強さと繊細さを両立させています。

折り紙という日本独自の文化と、紙という素材の可能性を極限までひらいた一作です。

 

 

 

作家:金 理有 作品:無垢彩線刻独眼行者

¥660,000

人間という存在を「魂のうつわ」として捉えた、強い存在感を放つ陶作品。

金理有は、日本と韓国の狭間に生きる自身のアイデンティティを背景に、境界や混交、そして歴史の重なりを主題として制作を続けています。

作品に穿たれた単眼の空洞は、肉体の内側に宿る意識や精神の深淵を覗き込むための装置のようでもあります。

静かに口を開くその闇は、自己を映し出す鏡であり、見る者に内面の感覚を問い返します。

表面に刻まれた文様には、縄文を思わせる原初的な気配と、現代の基盤回路やストリートカルチャーにも通じるリズムが重ねられています。

古代の遺物と現代文明の断片を等価に結びつけることで、この時代そのものを未来へ残る“遺跡”として焼き固めようとする試みが、この作品には込められています。

土と炎という原始的な力を通して、過去と未来、身体と意識、歴史と現在をひとつの造形へと結晶させた一作です。

 

 

 

作家:水代 達史 作品:Camouflage -昂

¥1,980,000

擬態をテーマに制作された「Camouflage」シリーズの一作。

ワオキツネザルとルピナスをモチーフに、尾を立てて佇む一瞬の気配を金属で捉えています。

生命の美しさや神秘性を見つめながら、打ち出しや透し彫りといった彫金技法を応用し、軽やかさと緊張感をあわせ持つ造形へと昇華。

金属という硬質な素材の中に、生きものが息づくような存在感を宿した作品です。

 

 

 

作家:蔦本 大樹 作品:金環の方舟 / Gold Ring Noah

¥880,000

青銅鋳物によってかたちづくられた、強い物語性を帯びた造形作品。

現代のサブカルチャーが生んだイメージを、数千年の耐久性をもつ古い素材へと置き換えることで、空想と現実、現在と未来を接続するような存在感を生み出しています。

青銅は、祭器や権威の象徴として長く人類の歴史を刻んできた素材。

その重みと時間への強さは、視覚的な造形を超えて、“未来の遺物”のようなロマンを作品に与えます。

蔦本大樹は、一時的な流行に留まりがちな現代の造形文化を、遠い未来に発見される歴史的遺物のようなものへとひらこうとしています。

古代文明の出土品を思わせる気配と、現代の想像力が交差する一作です。

 

 

 

作家:芝﨑 由華 作品:バウエルハチモドキ

¥950,000

昆虫が宿す精緻な造形美に焦点を当てた作品。

小さな体の中に潜む無数のかたちは、生き残るための進化の結晶であり、人知を超えた神秘的な美しさを湛えています。

芝﨑由華は、その小さな生命を顕微鏡で覗いたときの高揚や驚きを出発点に、指先に導かれるように本作を生み出しました。

ガラスならではの透明感と立体感によって、昆虫の繊細さと不思議な存在感が静かに際立ちます。

主に用いられているのは、キャスティングによるガラスの鋳造技法。

さらにスランピングや絵付けを組み合わせることで、昆虫の造形に宿る複雑さと生命感を、ガラスという素材の中に丁寧に定着させています。

小さな生きものの中に広がる、驚くほど豊かな世界を感じさせる一作です。

 

 

 

作家:A66 / Hiromu Moulinette 作品:龍の卵

¥275,000

山桜の倒木から、いままさに龍が生まれようとする瞬間を捉えた木彫作品。

伝説の生命の誕生を通して、輪廻や生命の循環を思わせる一作です。

素材には、間伐された山桜をはじめ、害獣駆除された鹿の角、印鑑の端材である水牛の角、細工物の端材である山羊の角を使用。

龍の角、牙、爪、髭にそれらを組み込むことで、異なる命の痕跡がひとつの造形へと結びつけられています。

山桜に生じた自然の割れもまた、この作品の景色であり、唯一無二の個性。

日本人にとって特別な存在である龍の姿を、一刀彫で一塊から彫り出し、拭き漆で静かな艶と深みを与えています。

自然の記憶と伝説的な想像力が交差する、力強い一作です。