LEGASEE [THE EDIT] 茶盌特集 Vol.1

LEGASEE [THE EDIT] 茶盌特集 Vol.1

THE EDITは、LEGASEEの視点で作品を選び、編んでいく特集です。

素材、技法、造形、背景、そして来歴の可能性まで。

ひとつのテーマから、いま注目したい現代工芸を紹介していきます。

 

 

作家:後関裕士 作品:黒茶盌

¥100,000

穴窯で一週間にわたり薪を焚き続けることで生まれた、黒備前を思わせる茶盌。

深くしっとりとした黒の中に、わずかに青みを帯びた窯変がにじみ、光の加減によって静かに表情を変えます。

造形は、土の自然な姿を尊重しながら形づくられたもの。

焼き締めならではの落ち着きと、手に取ったときに肌になじむような安心感が、この茶盌に静かな存在感を与えています。

安土桃山時代から続く備前焼の歴史の中で育まれてきた黒備前へのオマージュとして生まれたシリーズであり、現代の素材で黒を追求する中で現れた青い窯変が、この作品ならではの景色となっています。

端正でありながら余白を残す佇まいの中に、見る人それぞれの情景を映し出す一碗です。

 

 

 

作家:上野窯十三代 上野 浩平 作品:鐵綴目沓茶碗

¥220,000

上野窯十三代・上野浩平による、力強い造形の沓茶碗。

鉄の板材を曲げ、鋲で留めたかのような姿が印象的で、陶でありながら金工のような緊張感を湛えています。

当窯は、派手な色を用いず、透明釉によって土本来の発色を引き出す作風で知られますが、本作は赤土のみを用いた無地の黒茶碗。

錆色を思わせる釉調と鋲の細工には、作者が学生時代に学んだ金工の感覚が生かされています。

この造形の着想源となったのは、江戸時代に窯の先達が手がけた「綴目水指」。

熊本藩筆頭家老・松井家に伝わるその大胆な名品を、自らの解釈で茶碗へとひらいた、思い入れ深い一作です。

 

 

 

作家:萩焼十六代 坂倉新兵衛 作品:萩茶盌

¥333,000

萩焼の伝統土を用いて制作された、十六代坂倉新兵衛による茶盌。

やや大振りでありながら、手の内への収まりは心地よく、静かな存在感を湛えた一碗です。

落ち着いた色味の中に、登り窯の窯変によって土色が複雑に移ろい、しっとりとした釉調には萩焼ならではのやわらかな景色が宿っています。

抹茶の緑を美しく引き立てる、端正で奥行きある表情も魅力です。

萩焼は、毛利家の御用窯として始まった長い歴史を持つ焼物。

坂倉新兵衛は、その流れのひとつである深川窯の窯元として、受け継がれてきた萩の美意識を今に伝えています。

 

 

 

作家:朝日焼十六世 松林 豊斎 作品:茶盌 月白釉流シ金彩

¥333,000

朝日焼十六世・松林豊斎を代表する作風のひとつ、「月白釉流シ金彩」による茶盌。

小堀遠州の美意識として知られる“綺麗寂び”を、現代の感覚で力強く表現した一碗です。

藁灰を用いた月白釉のやわらかな水色と、金彩の華やかな輝きが“綺麗”を象徴し、宇治の粗めの土がもつ素朴さが“寂び”として対峙する。

その二つを白い化粧土がつなぐことで、華やかさと静けさがひとつの器の中で繊細に調和しています。

朝日焼に受け継がれてきた「箆目」「轆轤目」「刷毛目」という三つの技法も、本作の大きな魅力です。

外側には箆目による鋭い縦のリズムが緊張感を生み、内側には轆轤目がやわらかな広がりを与え、さらに大胆な金彩が器全体に現代的な印象を添えています。

慶長年間に始まる朝日焼の系譜の上に、伝統と新しさ、綺麗と寂びを重ね合わせた一作です。

 

 

 

作家:備前焼二十六代 木村桃山 作品:備前面取茶盌

¥113,000

備前地区の田土を用い、釉薬をかけずに登り窯で約二週間焚き続けることで生まれた、自然の色合いを宿す茶盌。

土そのものの力強さを生かしながら、面取りによって陰影と輪郭を際立たせ、備前ならではの土感をより印象深く引き出しています。

高台には三角の意匠が施され、○△□のかたちが静かに造形のアクセントとなっています。

素朴でありながら、細部にまで意識の行き届いた一碗です。

備前焼は須恵器の流れを汲み、平安時代に成立した千年の歴史をもつ日本六古窯のひとつ。

木村桃山の窯では、先祖代々受け継がれてきた田土を用い、昔ながらの焼成方法を守りながら制作が続けられています。

 

 

 

作家:鎌倉彫第三十代 三橋鎌幽 作品:青根来茶椀「空華」

¥330,000

鎌倉彫第三十代・三橋鎌幽による、一点制作の茶椀。

深い青の漆の中に、やわらかな歪みを帯びた輪郭が静かに立ち上がり、見るたびに表情を変えるような不思議な気配を宿しています。

本作は、本阿弥光悦の茶碗を三次元データとして解析し、その造形をもとに木地を轆轤で挽いて制作されたもの。

土ではなく木によって再構成することで、歴史的な茶碗のかたちを、現代の文脈へと引き直しています。

銘の「空華」は、存在しているようで実体を持たないものを意味します。

彫刻によって形を与えながら、漆の層によってその輪郭を曖昧にすることで、この茶椀は固定された器ではなく、現れ続ける存在として立ち上がります。

鎌倉時代に生まれた木彫漆工芸・鎌倉彫の系譜を受け継ぎながら、青根来という独自の表現によって、時間、思想、造形を一碗に重ねた作品です。